あさことりの日記

8歳と0歳の育児中。

何の本を読めばいいかわからない人に読んでほしい『学術書を読む』

 本は大好きですが、どの本を読むかって難しい。

そんな時に、『学術書を読む』を読んで答えがちょっと見つかりました。

学術書を読む

学術書を読む

 

読書の目的には、大きく分けて「娯楽」と「学び」があります。

娯楽のための読書なら、その時目にとまったものを読んでいくので十分かと思います。でも、学びのための読書をしようと思ったら、本を上手に選ぶ必要がありますね。

 

■本のジャンルを満遍なく選択できていますか?

特に、興味の幅が狭い方は、いつも同じようなジャンルの本を読んでいる可能性があり、危険です。全然学べていません。

私はだいぶそのタイプです。KindleUnlimitedで多読をして、1か月で10冊読んだー!と喜んでいた時期がありますが、ジャンルは「家事・育児」関連ばかり。すでに80知っていることを、81にするだけ、という、学びの効率としてよくない読書です。

悪いことに、”あなたにおすすめ”として表示される本も全て「家事・育児」関連の本オンリー。毎回そこから気になるタイトルを選択していくので、「家事・育児」カテゴリーから容易には抜け出せません。

でも、どの本も書いてあることはだいたい同じ。そこで飽きてきて、他のジャンルの本も読んでみたいなーと思っていた矢先に出会ったのが『学術書を読む』でした。

 

■専門外の専門書を読もう

学術書を読む』というタイトルですが、狭い意味での”学術書"を読むということを、推奨する本ではありません。

著者は、(自分の)専門外の専門書を読むことで、社会で起こる様々な課題の解決に際し自分で考える力をつける、ということを勧めています。

大学時代のずっと前の段階で進路選択が迫られ、高校での履修内容ですら文系志望と理系志望では大きく異なっている今の時代は、専門的な事柄についての知識は人によって大きな差が生まれ、それが肝心なときの合意形成に影響している(P17より引用)

私の得意とする専門ジャンルは「家事・育児」です。だから、「さつまいもを美味しく調理するには」といったような課題には自分の意見を論理的に述べることができますが、「大規模な豪雨が起きることを想定して各地域でどのような防災対策ができるか」などといった課題に対しては特に自分の意見を持たず、専門家の話を鵜呑みにするしかないわけです。

全てのジャンルに専門家レベルで精通する必要はありませんが、社会で起こる問題に対して自分の意見をもてるという状態まで、知識の幅を広げたい。

そうすることで、会社や家庭で起こる問題の解決をする際に、対等なレベルで話し合いができるので、全体にとって良い形での合意形成に至ることができます。

 そこで、知識の幅を広げるための手段として、学術書のようにきちんと書かれた本を読みましょう、と本書は言っています。

 

■速読・多読と精読

本書によると、読書法に関連する書籍は年に10冊ペースで発売されているようです。そして、その多くは速読・多読派。「ビジネスで勝ち残る」「年収アップ」等の文句で、より多くの本を読むことを推奨し、そのメソッドを公開しています。

その影響を受け、本をたくさん読むことは良いこと、という図式が私たちの頭の中にはあり、「1時間で読めた」とか、「月に10冊読んだ」とか、はやくたくさん読むことが目的化された読書をしてしまいます。

 

筆者は、速読、多読を否定していません。本を読む目的によっては有効であると言っています。例えば、ある分野の文献を速読、多読することで全体の問題を俯瞰し、それを踏まえて選書した本を精読する。速読、多読と精読は、どちらが良いとか優れているとかではなく、2つの方法をうまく組み合わせることが必要ということです。

 

ただ、上記のように速読をするには確証バイアスに注意しなければならないようです。人は自分に都合の良い、もしくは支持したい情報を拾い、都合の悪い、もしくは支持したくない情報は見ない、という性質があります。速読は拾い読みですから、自分の信念に沿ったものだけを拾い集め、後から精読でそれを強化するという読み方になりかねません。それを自覚できる場合のみ速読は有効なようです。

 

■子どもが絵本を読むように本を楽しむ

本の読み方のひとつとして著者が触れている方法が気に入ったので引用します。

精読に近いですが、少しニュアンスが違います。

小さな子どもたちも、おそらく大好きな絵本や物語を何遍も読んで、知らず知らずのうちに、芯すなわち人として生きる力の大事な部分ーー共感、対話、共同といったものーーを身につけているのではないでしょうか(P99から引用)

ちいさな子どもって、速読や多読はしませんよね。1度読んで、後に見向きもしなくなる本もありますが、気に入った本は何十回、さらには百回近く読みます。親から読んでもらったり、自分で絵を眺めたり。成長すれば自分で読むこともできます。

そうやって触れ続けた本は、その子の血肉となります。何十年たっても忘れることはありません。

大人になったら、「限られた時間を有効に使って沢山本を読まなければ」といった焦りからか、そういう読み方はしなくなります。”読み捨て”のような状態。

でも、これはといった本については、何回でも、何十回でも読み返すことは有意義なことです。1度読んだだけではぼんやりとしか理解できなかった本であっても、繰り返し読むことでそのエッセンスをしっかりと体にしみ込ませることができます。

 

■基本は入門系の本、時々難しい本を読む

本書では、学術書に近い専門書を読むことを勧めています。

それが専門外の本であれば、基礎的な概念が自分の中にないので、理解するのに時間がかかります。インターネットで用語の意味等を調べる必要もでてきます。それでも、根気と時間と好奇心さえあれば、大枠をつかむくらいならできる、と筆者は言っています。

ただ、私のような凡人には、その「根気と時間と好奇心」という資源があまりたくさんありません。だから、入門書でも良いんじゃないか?というのが私の考えです。

歴史についてだったら、漫画でも良い。超大枠を掴んで、ゼロをイチにする。

時々、「このテーマは深く知りたい」と思ったときに、専門書を精読してみる。そういう方法をとるのが現実的かと思います。